事業承継の方法としての第三者承継とはどのような承継方法でしょうか。また、第三者承継にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

第三者承継とは

第三者承継とは、経営者が第三者である外部の経営者や他の会社に事業を引き継がせることをいいます。第三者承継には、外部の経営者を招いて(外部招聘)①経営権だけを引き継がせ、②事業を行うための資産は経営者の親族などで引き継ぐ場合、他の会社に事業の全部または一部を売却する(M&A:会社の合併と買収)などして①経営権と②事業を行うための資産を引き継がせる場合があります。

帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2022)」によると2021年には、事業承継全体のうち外部招聘の方法による第三者承継は7.5%、M&Aの方法による第三者承継は20.3%を占めています。

第三者承継のメリット、デメリット

第三者承継には次のようなメリットがあります。

  1. 経営の経験がある者を後継者に選ぶことができる、もしくは事業の成長に適した会社を相手として選ぶことができ、親族内や役員・従業員から選ぶ場合と比べると後継者の選択肢が広がる。
  2. 経営者は、事業の全部または一部を売却した場合は、売却益を得ることができる。

その一方、第三者承継には次のようなデメリットがあります。

  1. 外部の経営者や相手となる会社が理想的な条件で事業を引き継いでくれる、または契約に応じてくれるとは限らない。
  2. 外部の経営者や会社が経営権を引き継ぐため、経営方針や人事などが大きく変わり、従業員が離反を招くおそれがある。
  3. 事業内容が大きく変わった場合には、顧客や取引先が離れてしまうおそれがある。

第三者承継には、このようなメリット、デメリットがありますので、デメリットに十分配慮しながらメリットを生かせるような承継方法を考える必要があります。また、第三者承継特有のデメリットの解消が難しいと感じる場合は、無理に第三者承継にこだわらず、親族内承継や従業員承継といった他の承継方法を検討することも大切です。

第三者承継を円滑に進めるには

第三者承継を円滑に進めるためには、第三者承継のデメリットへの対応が必要です。そのためには、経営状況や社会・経済の状況を十分に調査して適切なタイミングで承継できるようにすること、役員・従業員、取引先といった関係者に十分な説明をして理解を得ることなどが必要になります。

第三者承継の方法

第三者承継には、①外部招聘、②M&Aによる方法があります。

外部招聘による方法

外部招聘による方法は、外部から経営者を招き、経営者の地位を引き継がせる方法です。この方法は、他社の経営を立て直したことがあるような経験豊富な経営者に事業を任せることができ、事業の改善や成長につながる施策をとりやすいというメリットがありますが、役員や従業員の十分な理解を得られない場合に社内で対立が生じ、後継者が十分に経営の手腕を発揮できなくなるというデメリットがあります。

M&Aによる方法

M&Aによる方法は、他の会社に事業の全部または一部を売却することで事業を引き継ぐ方法です。M&Aの具体的な手法(スキーム)としては、株式譲渡、事業譲渡、株式交換などがあります。この方法は、経営者が事業の売却益を得られる、個人保証から解放される、他の会社の事業と一緒になることで相乗効果によって事業の改善や成長が期待できるというメリットがありますが、M&Aのタイミングや買い手側との交渉内容により理想的な条件や価格で事業を売却できるとは限らない、役員・従業員や取引先の十分な理解を得られない場合に内部の離反を招いたり、取引先が離れたりしてしまうというデメリットがあります。

まとめ

事業承継において第三者承継を考えている場合には、外部から人材を招いたり他の会社に事業を引き継がせることによるメリット、デメリットがあります。近年、第三者承継による事業承継は増えていますが、経営方針や事業のあり方が大きく変わることもあるため関係者との十分な調整が必要となりますし、経営状況や会社の価値の評価、他の会社との交渉には専門的な知識が必要となります。事業承継の方法を選ぶにあたっては、専門家に相談して適切なアドバイスを受けることが大切です。当事務所では、適切な事業承継の方法を選ぶお手伝いを行っていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。