事業承継を行うにあたり、経営承継円滑化法の支援を受けるにはどうすればよいでしょうか。

経営承継円滑化法とは

経営承継円滑化法(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律)は、中小企業の事業承継に伴う相続税・贈与税の負担の軽減(事業承継税制)金融支援のための特例遺留分に関する民法の特例所在不明株主に関する会社法の特例といった、事業承継の円滑化のための総合的支援策を定めた法律です。

経営承継円滑化法では、令和5年の時点で以下の4つの支援策が盛り込まれています。

事業承継税制

後継者が、都道府県知事の認定を受けた非上場中小企業の株式等を先代の経営者から相続または贈与により取得した場合に、5年間の事業継続等を要件として相続税・贈与税の納税が猶予される制度です。

金融支援

都道府県知事の認定を受けた中小企業者(中小企業と個人事業主)および個人(代表者や後継者)に対して、中小企業信用保険法の特例、株式会社日本政策金融公庫法および沖縄振興開発金融公庫法の特例が適用されることで、事業承継における資金需要に応える制度です。

遺留分に関する民法の特例

生前贈与された株式等が遺留分の対象から除外され、遺留分侵害額請求の対象外となることで、相続に伴う株式の分散を未然に防止し、また、生前贈与された株式等の評価額を予め固定して、後継者の貢献による株式価値の上昇分を遺留分侵害額請求の対象外とすることで、後継者の経営意欲が阻害されないようにする制度です。

所在不明株主に関する会社法の特例

都道府県知事の認定を受け、所定の手続きを経ることで、所在不明株主からの非上場の株式を買い取る場合に、通常5年以上継続して通知が到達しない、もしくは剰余金の配当が受領されないことで、株式の買い取りができるとされている期間が5年から1年に短縮される制度です。

事業承継税制の適用を受けるには

事業承継税制の適用を受けるには、都道府県知事に対して特例承継計画を提出して、経営承継円滑化法第17条第1項第1号の確認を受ける必要があります。また、相続と贈与の場合に応じて、都道府県知事に対して認定申請をして、第12条第1項の認定を受ける必要があります。

※事業承継税制の適用を受けるには、2026年(令和8年)3月31日までに特例承継計画を提出し、相続・贈与が2028年(令和10年)12月31日までに行われることが必要です。

特例承継計画

特例承継計画には、後継者(特例後継者)、後継者が株式等を承継するまでの期間の経営の計画(後継者が株式等をまだ承継していない場合)、後継者が株式等を承継した後5年間の経営計画などを記載する必要があります。

特例承継計画・認定申請書の様式は中小企業庁のウェブサイトで公開されています。

金融支援を受けるには

金融支援を受けるには、都道府県知事に対して認定申請をして、経営承継円滑化法第12条第1項の認定を受ける必要があります。

都道府県知事の認定を受けることで、個人(代表者や後継者)の場合は、日本政策金融公庫法または沖縄振興開発金融公庫の融資制度を利用でき、中小企業者(中小企業と個人事業主)または個人の場合は、金融機関から資金を借り入れる際に、原則として信用保証協会の通常の保証枠とは別枠が用意されます。

認定申請書の様式は中小企業庁のウェブサイトで公開されています。

遺留分に関する民法の特例の適用を受けるには

遺留分に関する民法の特例の適用を受けるには、一定の要件を満たしたうえで、推定相続人全員及び後継者の合意書を作成し、経済産業大臣に対して遺留分に関する民法の特例に係る確認申請をして、経営承継円滑化法第7条第1項の確認を受ける必要があります。さらに、家庭裁判所に遺留分の算定に係る合意の許可を求める申立をして、家庭裁判所の許可を受ける必要があります。

確認申請書の様式は中小企業庁のウェブサイトで、申立書の書式は裁判所のウェブサイトで公開されています。

所在不明株主に関する会社法の特例の適用を受けるには

所在不明株主に関する会社法の特例の適用を受けるには、都道府県知事に対して認定申請をして、経営承継円滑化法第12条第1項の認定を受ける必要があります。

認定申請書の様式は中小企業庁のウェブサイトで公開されています。

まとめ

経営承継円滑化法の支援策の適用を受けるには、支援策の内容に応じて各種書類の作成が必要です。当事務所では、各支援策の申請に必要な書類を作成するお手伝いを行っていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。