事業承継の準備をするにあたり、経営者として何から取り組むとよいでしょうか。事業承継の進め方について漠然としたイメージはあるかもしれません。しかし、事業承継の準備に取り組むには、誰に、何を、いつ、どのように引き継がせるのかという具体的な計画をもつことが大切です。そのために、事業承継がどのような流れで進んでいくのかを把握しておきましょう。
事業承継の流れ
事業承継の準備を始める前に、事業承継のおおまかな流れを把握しておく必要があります。
- 事業承継の必要性の認識
- 経営状況や経営課題などの把握(経営の見える化)
- 経営改善
- 親族内承継・従業員承継の場合
- 事業承継計画の作成
- 事業承継の実施
- 第三者承継の場合
- 事業承継計画の作成
- 売り手と買い手の交渉(マッチング)
- M&Aの実施
事業承継はこのような流れで進んでいきますが、経営者がまだ事業承継の必要性を認識していない場合は、1番目の「事業承継の必要性の認識」から、すでに必要性を認識している場合は、2番目の「経営の見える化」から取り組むことになります。
事業承継の必要性の認識
経営者が事業承継に取り組むには、まず経営者自身が事業承継の必要性を認識しておくことが必要です。近年、事業承継を準備しておくことが必要であるという認識は広まってきています。しかし、経営者の中には、事業承継はまだ必要ないのではないか、事業承継の話をすると引退すると受け取られるのではないかと思っている方もいます。そのような経営者の方が、なぜ事業承継を準備しておくことが必要なのか理解することが大切です。
経営者が経営を続けられなくなったとき、今運営している事業の将来は大きく二つに分かれます。一つは事業を誰かに引き継ぎ、事業を新たな経営者へとつなげる事業承継、もう一つは事業をやめる廃業(廃業や清算)です。経営者が経営を続けられなくなる事態はいつ起こるか分かりません。その時に事業を引き継ぐ準備ができていないと、後継者にうまく事業を引き継げなかったり、後継者が見つからなかったりといった問題に直面してしまいます。このような将来のリスクに備えておくことも事業承継の準備の役割の一つであり、まだまだ現役という経営者の方であっても、今から取り組み始めて早すぎることはありません。
経営の見える化
続いて経営者が取り組まなければいけないのが「経営の見える化」の作業です。「経営の見える化」とは、現在の経営状況や経営課題などを正確に把握することをいいます。経営状況や経営課題などを認識できる形に整理しておくことで、経営者は事業承継の具体的な計画を作ることができるようになり、役員・従業員や金融機関、取引先、株主といった関係者と経営に関わる情報を共有することができます。それにより、経営改善に何が必要か、どのような方法で事業承継するか、承継後の経営をどのように支えていくかといった具体的な事業承継の問題を検討しやすくなります。
何を見える化するのか
「経営の見える化」を行うにあたり、どのようなことを把握しておく必要があるのでしょうか。ここでは、主に把握しておくべきことをあげます。
- 事業内容
- 自社株式の状況
- 相続財産と相続税
- 事業用不動産
- 決算処理の状況
- 貸借対照表、損益計算書などの書類
- 取引先との契約関係
- 労務や人事制度
- 後継者の候補者
まとめ
事業承継は経営者がその必要性を認識すること、そして「経営の見える化」に取り組むことが大切です。「経営の見える化」により経営状況や経営課題を関係者と共有しておくことが、事業承継の準備をスムーズに進めることにつながります。
「経営の見える化」には経営者自ら取り組むことができますが、より正確に経営状況や経営課題を把握して、その後の経営改善や事業承継の方法の検討につなげていくためには、専門家に相談して適切なアドバイスを受けることが大切です。当事務所では、「経営の見える化」から事業承継へとつなげるお手伝いを行っていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。